2026年第2四半期までに、米国の就業者の5人に2人近くが、前週に仕事で生成AIを使ったと回答した。一方、セントルイス連銀、ヴァンダービルト大学、ハーバード大学の研究者による全国調査トラッカーによると、就業者全体の労働時間のうちAIが支援した割合は6.3%だった。前者は利用した人の割合、後者は利用時間の割合を数えている。どちらの数字も、仕事の質や企業の収益、雇用が失われたかどうかを示すものではない。
ソフトウェア開発者以外の仕事でも、同じように頻繁にAIが使われるようになるのかを考える際には、こうした違いが重要だ。プラットフォームの記録では、法務、営業、マーケティングなどで試行が広がっている。実験では、コーディング以外の作業でも実際の成果向上が確認されている。その一方で、ツールを使えるだけではほとんど変化しない場合や、整った回答が誤っている場合もある。
大きな変化
- 何が変わったのか: AI各社は、より多くの業務分野で継続的な利用やエージェントの稼働を報告している。一方、独立した調査でも、米国の就業者の週単位の利用が広がっている。
- なぜ重要なのか: ツールが既存の業務フローに合えば利用は広がるが、成果は作業の状況や検証方法に左右される。導入状況と併せて成果指標も必要だ。
- 今後の注目点: 作業の反復利用、検証済みの出力品質、コーディング以外での純便益だ。現時点の証拠からは、他の職種がいつコーディング並みの利用水準に達するのか、雇用に何が起きるのかは分からない。
数字が測っているものはそれぞれ異なる
「リアルタイム人口調査」は、米国在住の18~64歳を対象とする全国代表性のあるオンライン標本に、仕事でのAI利用を尋ねている。前週の利用率は、2024年第3四半期の28.2%から2026年第2四半期には39.2%に上昇した。就業者全体の労働時間のうちAIの支援を受けた時間の推計割合も、4.1%から6.3%になった。回答者は、直近の四半期に総労働時間の2.2%をAIが節約したとも推定している。この最後の数字は、記憶に基づく時間の節約であり、実測された生産性や収益の向上ではない。
OpenAIが把握しているのは、これとは異なる、自社の法人顧客内の活動だ。同社の8月版「Enterprise Signals」レポートによると、2026年2月から6月にかけて、週次アクティブCodexユーザーは法務で108倍、営業・採用で41倍、マーケティングで26倍に増えた。エンジニアリングでは5倍だった。基準となる利用者数は公表されていないため、AIを使う弁護士とエンジニアの人数や、それぞれの職種の仕事に占める割合を比較することはできない。6月には、法人顧客におけるCodexとChatGPTの合計出力トークンのうち、Codexが64%を占めた。エージェントの実行時間が長いほどトークン数は増える。この割合は、利用する従業員の割合でも価値の指標でもない。OpenAIはこれらの製品を販売しており、利用拡大を示す利害関係がある。
OpenAIが別途実施した、米国のChatGPTメッセージ80万件超の調査では、7月の発表時点で、仕事関連メッセージの16.8%がユーザー自身の職業とは異なる職業に関連する作業に分類された。職業に対応付けられるほど具体的なメッセージに限ると、その割合は43.5%だった。9月の追跡調査では、一部の従業員が翌月にもそうした作業を再び依頼していたことが分かった。これらは標本に含まれる利用者のメッセージ比率であり、職業は企業向け登録情報から推定している。人々が何を頼み、再び依頼するかは示すが、作業が完了したか、仕事の内容が変わったかは示さない。
Anthropicの6月版「Economic Index」も、自社サービス上の活動を調べている。より細かい標本で勤務時間中の利用パターンを捉え、チャット、Cowork、同社のAPI利用を区別している。関連する調査では、Claudeを5回以上利用した約9,700人の回答を利用状況と結び付けた。Anthropic自身が、回答者は労働力全体を代表していないと注意を促している。回答者の約30%はコンピューター・数学系の職種だったが、米国の雇用に占める同職種の割合は約4%だった。現場作業系の職種は過少代表だった。先行する3月版の指標では、2026年2月のClaude.aiの会話の35%がコンピューター・数学系の作業に関係していた。これは一つの製品内の会話の割合であり、AIを使う開発者の割合ではない。また、コーディング利用はAPIにも移りつつあった。各社のトラフィックからは、プラットフォーム内の作業内容や頻度は分かるが、それだけで職種全体の導入率を算出することはできない。
生産性は作業内容と検証方法に左右される
5,172人の顧客サポート担当者を対象とする段階的な導入実験では、会話支援AIへのアクセスによって、1時間当たりの対応解決件数が平均15%増えた。経験や技能の少ない担当者では、速度と品質の両方が向上した。最も経験豊富で技能の高い担当者は、速度がわずかに上がる一方、品質が小幅に低下した。顧客はより丁寧になり、管理者への取り次ぎを求める頻度も下がった。この研究は、対応件数やエスカレーションを追跡できる一社のサポート業務を測定したもので、他社の窓口業務の収益を算出したわけではない。
66社の知識労働者7,137人を対象とした実験では、メール、会議、文書作成ソフトに組み込んだAIツールを無作為に提供した。6カ月の調査後半では、ツールを使った介入対象者の80%が、週当たりのメール作業時間を2時間減らし、通常の勤務時間外に働く時間も短縮した。個人にツールを提供しただけでは、作業量や作業構成に広範な変化は検出されなかった。著者3人はMicrosoft Researchに所属していた。また、ツールを開発したMicrosoftは実験を共同で企画し、製品の利用記録も提供した。この結果が対象とするのは参加企業であり、オフィスワーク全体ではない。
ボストン コンサルティング グループのコンサルタント758人を対象にしたフィールド実験は、2023年に実施され、2026年3月に公表された。GPT-4の得意分野に合うよう意図的に選ばれた作業では、より速く、評価の高い成果が得られた。一方、聞き取りの証拠を解釈する別の事例では、AI利用者が誤答する確率が高かった。BCGが共同研究したこの実験は、定義された課題を検証したもので、顧客に提供した成果を測定したものではない。
METRが、経験豊富なオープンソース開発者16人に、彼らが精通するリポジトリの246件の課題を解いてもらった無作為化研究では、2025年初頭のAIツールを使うと完了までの時間が19%長くなった。それでも開発者は、ツールによって作業が速くなったと考えていた。METRが後に実施した試みでは新しいツールによる向上が示唆されたが、研究者は推計の信頼性が低いと判断した。AIなしでは作業したくない開発者が参加を辞退し、複数のエージェントの並行作業が時間計測を複雑にしたためだ。したがって、これらの研究から、ツールや時期を問わず共通する単一のコーディング生産性効果を確定することはできない。
コードには、比較的確認しやすいフィードバックがある。リポジトリには文脈や変更履歴が残り、ビルド、テスト、レビューで問題が見つかることもある。それでも、テストに通ることだけで成果物全体を評価できるわけではない。顧客サポートでは、問題が解決したかや顧客の反応が別の手掛かりになる。メールの下書きは時間を節約しても、企業の産出量を変えないかもしれない。法務、金融、医療の提案では、影響の大きさに応じた検証が必要であり、購入者はツール料金だけでなく確認作業も考慮しなければならない。測定上の課題はそれぞれ異なるため、利用の有無だけから同等の活用度や価値を判断することはできない。
給与に表れる前に仕事が変わることもある
デンマークでは、研究者がAIの影響を受けやすい11職種の従業員調査と7,000の職場を行政記録に結び付けた。その2026年3月改訂版は、企業のチャットボット導入や申告された作業内容の変化を確認した一方、ChatGPT公開から2年後の時点で、従業員や職場単位の賃金や記録上の労働時間に検出可能な影響は見つからなかった。推計では2%を超える影響は除外される。この結果の範囲はデンマーク、対象職種、調査期間に限られる。後の導入拡大によって雇用が変わらないと証明するものではない。
従業員にとって、継続的な利用は担当作業の幅が広がることや、メールに費やす時間が減ることを意味するかもしれない。購入者が知りたいのは、業務全体として許容できる費用で信頼できる成果を出せるかどうかだ。サポートの回答を受け取る人や専門家の助言を頼りにする人にとっては、それが正確で、責任の所在が明確かが重要になる。現在の証拠は、コーディング以外にも利用が広がり、特定の作業で測定可能な成果があることを裏付けている。しかし、他の職種がいつソフトウェア開発と同じ深さで利用するようになるのか、職種横断で生産性や雇用にどのような影響が出るのかを示すには至っていない。
出典・参考資料
- セントルイス連銀によるリアルタイム人口調査の導入状況トラッカー解説、2026年8月27日:米国の前週の利用率、AI支援を受けた労働時間、自己申告による時間節約を掲載。成果物の質や収益は観測していない。
- OpenAI「Enterprise Signals」、2026年8月12日更新:OpenAIの法人顧客内の利用状況を、トークン数と週次アクティブユーザー数で示す。増加率の基準となる人数は公表されていない。
- OpenAI「Work at the Frontier」、2026年7月、および9月の追跡調査:標本に含まれる法人ユーザーのChatGPTメッセージ分類と反復利用を扱う。仕事の完了状況を示すものではない。
- Anthropic「Economic Index: Cadences」、2026年6月26日、および「Learning Curves」、2026年3月24日:Claudeの活動、出力の種類、選定された利用者への調査を掲載。分母はAnthropicのトラフィックと回答者である。
- Brynjolfsson、Li、Raymond「Generative AI at Work」、2025年2月4日にオンライン公開、5月号の「Quarterly Journal of Economics」掲載:一社の段階的導入実験におけるサポート担当者の生産性、技能別の違い、顧客の反応を測定。
- Dillonほか「Shifting Work Patterns with Generative AI」、2025年11月改訂:参加企業でのAI利用の無作為提供、メールに費やす時間、作業構成を調査。著者3人がMicrosoft Researchに所属し、Microsoftは実験を共同で企画した。
- Dell'Acquaほか「Navigating the Jagged Technological Frontier」、2023年に実験を実施し、2026年3月11日に公表:異なるコンサルティング課題で作業速度、評価された品質、誤りを測定。
- METRの開発者実験および2026年2月の更新:コーディングの無作為化実験と、後続研究における選択バイアスの問題。
- Humlum、Vestergaard「Still Waters, Rapid Currents」、2026年3月改訂:デンマークの従業員・職場調査を行政上の労働時間・賃金記録に結び付けて分析。



